
今回はゼルダの伝説ブレスオブザワイルドのストーリームービー『絶望』を分析・考察していきます。1シーン1シーンを抜粋し、リンクやゼルダ姫の心情を解説してきます。当然のことながらネタバレが含まれますのでご了承ください。
↓『絶望』ってどんな内容だったっけ?という方はこちらをどうぞ。
それぞれのシーンを分析・考察
ではムービーを1つ1つシーン分割して分析・考察していきたいと思います。
冒頭 激しく降る雨

ムービーの冒頭シーンは、状況説明の役割を担っています。 激しく降り続ける雨と草木が生い茂る森、いかにも不穏な空気が漂ってきます。
少し話がそれますが、アニメや映画でよく使われる考え方として『雨』というのは『死』の象徴であるという考え方があります。なのでこれ以降は、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドでもその考えを取り入れていると仮定して話を進めていきます。
森の中を走る2人の人物

このシーンでは雨の中、森を走る2人の姿が足元のみ映し出されます。前を走る人物は右手に剣を持っていて、後ろについて走る人物はスカートを履いていることがわかります。ここで、観ている人は、なんとなくリンクとゼルダだろうなと予測するはずです。

そして注目して欲しい部分は、前を走る人物のみが、水溜まりに片足を踏み入れているというところです。これは文字通り『死』に片足を突っ込むという表現でもあるわけです。つまりここから読み取れることは、前を走る人物はこの後、瀕死の状態になるということを暗示しているんですね。
草木が生い茂る中走る二人

そして、走る2人の小さな姿が見えてきます。ここでは手前に生い茂る草木を配置し、その奥に人物を走らせています。これは実相寺アングルという手法で、奥に見える人物を際立たせたり注目させたりする効果があります。
手前にディテールの細かい配置物を置き、奥で動く人物をところどころ隠すことにより、観ている人は「奥で何が動いているんだ?」と考え始め、映像に集中していきます。
前だけを見て逃げるリンク と 必死についていくゼルダ

ここでようやく走っている人物を認識することができます。前を走っていたのは主人公のリンクで、後ろを走っていたのはゼルダ姫だったということがわかります。この時、リンクは前だけを見て懸命に走り続けます。一方ゼルダはリンクについていくのがやっとという状態で必死に走ります。
なんとなくですが、ゼルダは気力を失っているようにも見えます。

ゼルダ 後ろを振り返る

そしてゼルダがふと後ろを振り返ります。するとゼルダ姫は、ぬかるみに足をとられ倒れてしまいます。同時にリンクと繋いでいた手も離れます。

ここでゼルダが振り返ってコケてしまった理由は『状況的』理由と『心情的』理由の2つ考えられます。状況的理由は追手(ガーディアン)を確認したから。心情的理由は自分の過去を振り返ってしまったからということが挙げられます。1つ目の追手の確認はわかりますよね。では2つ目の自分の過去を振り返ったからコケたというのはどういうことでしょうか。
それは、今まで力を注いできた封印の力を得るための修行や、遺物研究が全く役に立たず、厄災ガノンに利用されてしまったというゼルダ姫の挫折を表現しているということです。
つまりは厄災ガノンに足をすくわれたということですね。
リンクは『ゼルダ姫を守る』という強い目的があるので、後ろ(過去)を振り返ることなく前(未来)だけを見て走り続けたのですが、目的を失ったゼルダ姫はその場(現在)で倒れこみ、目的が違った2人の手が離れてしまったのです。
慌てて止まるリンク

ゼルダの手が離れた後、リンクは慌てて後ろを振り向きます。
リンクは前(未来)だけを見すぎていて、『ゼルダ姫を守る』という目的を見失いかけていたのかもしれません。リンクが未来を見続ける自分と、過去に囚われたゼルダとのすれ違いに気付くシーンでもあります。ここでリンクが驚いた顔をしたのは、目的を見失いかけていた自分に気付いたことと、ゼルダの苦しみを察したからだと思います。その後リンクはゼルダ姫にゆっくりと近づいていくんですね。

そして退魔の剣を鞘に納めてしまいます。視界の悪い森の中でいつどこから敵に襲われるのかわからない状況なのにです。このことから、リンクは相当にゼルダ姫を心配し寄り添おうとしていることがわかります。

雨が激しくゼルダの背中を打ち続ける

ここでアングルが空へと変わります。このアングルはラストシーンでも使われるのでよーく覚えておいてください。
拳を握りしめるゼルダ

このシーンでは、ゼルダの悔しさが表れています。自分が関わった研究で、四神獣やガーディアンを起動することができたのに、それを厄災ガノンに奪われてしまった。この悔しさを、拳を強く握りしめるという動作で表現しているんですね。
悲しみよりも、悔しさが強調されているので、ここではまだゼルダは理性で感情を抑え込んでいるのがわかります。このことはゼルダの表情でも見て取れます。

あふれ出る感情

しかし、ゼルダ姫が神獣に向かった仲間の事を話始めると、途端に感情が表に出てきます。『悔しさ』が『悲しみ』に変化するシーンです。
2人の小さな姿

かなり見ずらいですが、画面中央にゼルダとリンクの姿が小さく映ったシーンに切り替わります。そして「私が今までしてきたことは何の役にもたたなかった」とゼルダ姫が嘆きます。
これは画面の通りで、この広大な世界にとって、厄災という自然災害ともいえる存在にとって、力を持つ物と力を持たない物は等しく、とても小さな存在でしかないということを表しています。
つまりは4人の英傑たちも、リンクも、ゼルダも、ハイラルの民も、厄災ガノンにとってはちっぽけな存在でしかなかったという暗示です。
リンクに懺悔するゼルダ

そしてこのシーンでゼルダは自分のせいで、仲間、ハイラルの民、父を死なせてしまったとリンクに懺悔します。本来ゼルダは全く悪いことをしていないにもかかわらず、自分のせいだと思い込んでしまっているんですね。
それは、辛く苦しい修行の合間に行ってきた遺物研究の成果が、よりにもよって仲間や多くの民を傷つけるために利用されてしまったことが原因です。
厄災ガノンに利用されたという状況を差し引いても、自らが力を注いで研究し、起動させた神獣やガーディアンが人を傷つけてしまった。それは本当に悲しく苦しい出来事のはずです。
さらには、もっとも重要な役割である『封印の力』を得ることができなかったという事実も、ゼルダに重くのしかかっていることでしょう。このシーンはまさにゼルダの『絶望』を表現しているんですね。
6歳で最愛の母を亡くし、10年間もつらく苦しい修行に耐えてきたのに、こんな不幸がゼルダを襲うとは・・・あまりに残酷ではありませんか・・・
リンクの腕の中で号泣するゼルダ

そしてゼルダは、リンクの腕の中で声を荒げて号泣します。6歳の頃母が死に、葬儀では一切涙をみせず気丈にふるまっていた、そのゼルダ姫がです。
おそらくゼルダにとって人生初めての号泣だと思います。今までは必死に姫としての役目を全うしてきましたが、ハイラル王国は滅亡し、大事な仲間、民、唯一の親類である父を失ってしまいました。あまりに多くの物を一度に失ったため、その悲しみには耐えることはできなかったのでしょう。
しかし裏を返せば、ゼルダにとって縛るものがなくなったということでもあります。ここでの号泣は『過去』や『しきたり』に縛られていたゼルダが『未来』へ向かって一歩踏み出したという意味もあるはずです。その証拠に、始めはお互いにぎこちない関係であったリンクの腕の中で、声を上げて泣いているんです。
ゼルダ姫はようやく人前で泣くことができたんだね、という表現も含まれていると思います。
ゼルダの泣声が響きわたる

最後は、空を映したアングルでゼルダの泣声が響き渡るというシーンです。このシーンでは、今まで激しく降っていた雨の音が消え、ゼルダの泣声が大きく響いています。つまりこの雨はゼルダの涙でもあるということです。
流した涙が自らの体を打ち続ける、これは水葬に近い考え方かもしれないですね。死んでいった仲間、民、父、過去の自分をここで弔ったという表現に思えて仕方がないです。
まとめ
以上が『絶望』の分析と考察でした。これらのことを踏まえてもう一度ムービーを見てみるとまた違った発見があるかもしれないですね。
そして、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドは、プレイする人によって体験が異なります。だから今回ぼくが解釈した内容以外にも、多くの解釈が存在すると思います。
なので興味がわいた方は是非、自分なりの分析・考察を行ってみてください。きっと今まで以上にゼルダの伝説が好きになっていくはずです。
それでは。






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