チェンソーマンの面白さの秘密に迫る

作:藤本タツキ 出:集英社

作者:藤本タツキ

『このマンガがすごい!2020』ランクイン

『このマンガがすごい!2021』ランクイン

2021年第66回小学館漫画賞少年向け部門受賞

累計発行部数640万部突破(2021年1月時点)

圧倒的存在感で多くの人を魅了しているチェンソーマン。私も魅了された一人であり連載時は日付が変わる瞬間にジャンプ+を開いて購読するほどに最新話を待ち侘びていました。もちろん単行本も全10巻(2021年2月時点)購入済み。

今回はそんなチェンソーマン信者の私が、チェンソーマンの面白さの秘密について深掘りしていきたいと思います。

まぁまずはざっくりとチェンソーマンの面白い部分、評価されている部分をお伝えしていきます。

チェンソーマンという作品は、ストーリー展開が極端に早く、セリフも日常会話並みに軽いことが多くスラスラと読み進めることができます。しかしその割に、現代社会に悪魔が当たり前に存在するという世界観設定がしっかりと練られていて、短いストーリーの中に伏線が大量に張り巡らされています。さらには登場する悪魔のデザインセンスが飛び抜けていてかなりカッコイイ造形。所々に宗教や映画、他作品をモチーフとした描写が登場し、幅広い層の読者を虜にしている神マンガです。

と、抽象的な言葉が多くなってしまったので一つ一つ

かいつまんでお話ししていこうかなと思います。

ストーリー展開の早さと揺るがない世界観設定

チェンソーマンはジャンプ本誌では完結しており、単行本では全11巻完結と、比較的コンパクトにまとまっております。(2021年2月時点では10巻まで発売中)

展開が早くストーリーも面白いと話題になった鬼滅の刃が23巻完結ということを鑑みると、チェンソーマンはかなり短いイメージです。

そしてその短くコンパクトにまとまったストーリー内にこれでもかというサプライズや伏線が仕込まれていることがチェンソーマン人気に火が付いた理由の一つだと思います。

とりわけ特徴的なのが、バトルシーン。
大抵のジャンプマンガのバトルシーンは何十話にわたって繰り広げられていくものなのですが、チェンソーマンの場合は長くても4話程度と決着までが超特急なんです。

めっちゃ強そうな新キャラ登場した!と思ったら次のページでは首がふっとんでいる・・・なんてことはよくあること。このように読者の期待をあげにあげてすぐに落とすことが得意な藤本タツキ先生。だから期待を裏切られた読者は毎度のようにツイッターで嘆き、トレンドを席巻してしまう。

一時期チェンソーマンは、ジャンプ発売日のツイッタートレンドランキングに必ずと言っていいほどランクインするほどの熱狂ぶりを見せていたことがありましたが、その時期は読者の精神が毎週のように揺らされていたんです。

そんなジェットコースターのような展開を毎週のように繰り返しながらもストーリーが破綻しなかったのは、根底にしっかりとした世界観設定がなされているからだと感じます。

悪魔が根付いた現代社会が舞台。そして悪魔を取り締まるデビルハンターという職業が存在する。悪魔は人間の不幸が大好物だが人間に協力的な悪魔も存在し、契約を結ぶなどで人間が悪魔の力を使うことも可能。そしてなにより悪魔は人間が恐れるものの名前が具現化した存在で、その恐怖が大きければ大きいほどに悪魔の力も強大になっていく。



まだまだ設定は山ほど隠されているのですが、悪魔と人間という2つの要素の間にこれでもかと設定を作ることによって、膨大なバックボーンを形成しています。それゆえに読者は作者が表に出さない設定を想像し、考察する現象が各所で発生しました。

僕もその現象に取り込まれた一人でございます。

主人公に感情移入しないで読むことができる


一般的にジャンプマンガってキャラクターに感情移入し、主人公や仲間たちに思いを重ねることで勝利の感動や敗北の悔しさを読者が味わう・・・みたいなイメージが強いかと思われます。

それが顕著なのは『ハイキュー!』という作品。
ハイキューは、様々な能力や性格を持った登場人物に、無意識のうちに思いを重ねて応援してしまう、まさにジャンプマンガって感じの作品です。

その真逆に位置するのがチェンソーマンです。

チェンソーマンの主人公デンジは生まれながらにして両親がおらず、毎日ヤクザにこき使われて物置小屋で生活するまさにどん底を具現化した存在。なのにデンジはゴリゴリに能天気な性格なんです。
そんなデンジに自分を重ねる人間は、現代のマンガ世代である10代20代にはほとんどいないかと思われます。

マンガが読める生活をしているということは、食べるものにも寝る場所にも困ってはいないでしょう・・・

この主人公に全く感情移入ができないという部分。おそらく作者の藤本タツキ先生は故意的に、計算的に、策略的に作りこんでいるはずです。
これは主人公以外のキャラクターも同様で、ほとんど感情移入ができません。日常会話レベルのセリフをイカす言い回しでポンポンとリズミカルに吐き出すキャラクター。ほとんどのキャラクターは本編中にバックボーン、生い立ちは語られません。あったとしてもサラッとなでる程度。

これほどまでに徹底的に泥臭さを切り捨てたジャンプ漫画家もそうそういないでしょう笑

藤本タツキ先生はキャラに感情移入できない状況を意図的に作り出すことによって、読者に対して「これはあなたの物語ではないですよ。安心して楽しんで読んでくださいね」と感覚的に思い込ませているのかもしれません。感情移入できる作品って面白いんですけど、読むのに時間を使う上に疲れてしまうんですよね・・・僕だけかもしれませんが。

チェンソーマンという漫画は、読者が常に客観的に読み続けることができる作品となっています。だからファストフードのように手軽かつ気軽に何度も読み返してしまい、中毒性が強いです。

最近2時間の映画をじっと座って観ていることができない人が増えてきていると聞いたことがあります。スマートフォンの登場でYoutubeやTikTokが流行っていて、いつでもどこでも手軽に暇をつぶせるようになったことが一因らしいです。

そんな時代の変化とチェンソーマンの読みやすさがマッチしたことも、人気がブチあがった理由の一つかもしれませんね。

悪魔の造形がカッコよすぎる・・・

ここまではストーリーとか設定の話でしたが、ここではビジュアルの話をしていこうかと思います。

チェンソーマン。

とにかくビジュアルがおしゃれでカッコいい!

チェンソーマン
作:藤本タツキ 出:集英社

この表紙の色使いを観てください。刺激的な色使いなのに全くもって絵が破綻していない感じ。むしろこの色使いが本来の色といわれても違和感ないまでにおしゃれです。

表紙だけではありません。

作中に登場する悪魔、めちゃくちゃカッコいいです。

作:藤本タツキ 出:集英社

何を観て育ってきたらこんなデザインを思いついてしまうんでしょうか。

フィギュア化希望です。

このようにチェンソーマンはビジュアルの刺激も一流品なので、読者に手に取ってもらいやすく誰かに見せたくなるような、話したくなるような要素盛りだくさんです。

SNSが蔓延る現代社会にはもってこいの作品ですね。

オマージュを探せ!

チェンソーマンには宗教、映画、アニメ、マンガなどなど様々な作品をモチーフとした表現やキャラクターがふんだんに登場します。漫画界のアベンジャーズといった具合に。

特に物語後半にはキリスト教や聖書などの、グローバルスタンダードな作品?からオマージュすることによって、読者の知的好奇心を刺激します。

だからこそ、多くの読者は自分の持っていない知識を探す旅に出ます。
そしてその旅の途中で出会った同志達(チェンソーマンファン)と語り合い、さらに同志を増やしていくという循環が生まれていきました。

これが世にいう「永久機関」です。

チェンソーマンを読んだ様々な年代の人が「このシーンはこの作品に似ている」とか「ここは○○って映画をモチーフにしているんだ!」という情報を発信することでチェンソーマンの輪が広がっていったんですね。

ほんとに面白いです。

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